Wet Pavement Forward Roll: Fun After-School Moment
愛良と友達が、放課後の湿った砂利道で、楽しそうに転がり合う。笑顔が真っ赤で、制服が濡れていく中、彼女たちは笑い合う。愛良は、母の心配している家へと向かう。その道中、友達たちの笑いが、彼女の胸に押し寄せてくる。家に到着すると、彼女の笑顔が消えていく。

雨に濡れた前転
濡れた午後の始まり
授業が終わるのと同時に、ようやく雨が上がった。白川高校の校庭を囲む舗装路は、磨かれた鏡のように鈍く光っている。水たまりが道の縁に沿って溜まり、葉から滴る雫の音が、まだ空気に満ちていた。生徒たちは、傘を畳み、水しぶきを上げながら急いで門へと向かう。一刻も早く家に帰りたいのだ。
しかし、三人の少女だけは立ち去らなかった。
愛良と華と芽衣は、校舎横の開けたスペースに並んで立っていた。地面は空を映すほど濡れている。雲間から差し込んだ夕日が、世界を温かい橙色に染め上げていた。いたずらをするには絶好の空気だ。
愛良は足元の濡れて光るアスファルトを見つめ、微笑んだ。
「これ、楽しそうじゃない?」
華が眉を上げた。「どういう意味よ?」
愛良は一歩前に出ると、しゃがみ込み、濡れた地面に手をついた。そのまま、勢いをつけて前転する。
制服のブラウスが体に張り付き、スカートが捲れ、水しぶきが飛び散る。肩から膝までびしょ濡れになった愛良は、一瞬呆然とした表情で起き上がった。
そして、堪えきれずに笑い出した。
華と芽衣はしばらく見つめていたが、やがて大声で笑い始めた。
「愛良、まるで濡れた雑巾みたいよ!」と芽衣が言う。
愛良は髪から水を払い飛ばした。「濡れても暖かいし、とにかく楽しいのよ。ほら、来なさい!」
二人はもう迷わなかった。
だって、彼女たちは親友なのだ。
一回転が三回転に
次に華の番だった。彼女は大きく息を吸い、屈み込んで、滑りやすい舗装路を前に転がる。愛良よりもスカートが派手に舞い上がり、途中で「キャッ」と小さな叫び声が漏れた。
愛良は手を叩いて笑う。「まるでネズミの鳴き声みたい!」
「そんなことないわ!」と華は反論したが、全身から水が滴っていた。
最後に芽衣が立ち上がる。戦いに臨むかのようにスカートを整えると、力を入れすぎて前転した。体が滑り、変な回転がかかり、最後は横向きになって背中から倒れ込んだ。
三人は全身ずぶ濡れになって立ち上がった。スカートは足に貼りつき、ブラウスは肌に密着している。髪からは水が滴り落ちていた。しかし、彼女たちの笑い声だけが、校庭に響き渡った。
「なんでこんなに楽しいんだろうね?」と、芽衣が顔を拭いながら言った。
「だって、私たち、馬鹿なんだもの」と華がにやりと笑って答える。
愛良は頷いた。「幸せな馬鹿ね」
そして、三人は再び一列に並んだ。
また、前転。
また、前転。
前転するたびに水しぶきと歓声、そして爆笑が起こる。ある時、愛良は勢いをつけすぎて、カニのように手足をばたつかせながら背中を滑り、数メートルも移動してしまった。華は腹を抱えて笑い、芽衣はよろめいた。
制服はもう完全に水を吸い込んでいる。袖から水が流れ落ち、一歩踏み出すたびに靴下の中で水が音を立てる。前転の度にスカートは捲れ上がったが、誰も気にしない。彼女たちは、優等生の女子高生でいることなど考えていなかった。ただ、今、この瞬間に生きていると感じる喜びだけがあった。
記憶に残る一瞬
何度も転がった後、三人は濡れたアスファルトに仰向けに倒れ込み、激しい息遣いを繰り返した。
華が空を見上げた。「風邪ひくわよ」
愛良は首を振った。「たぶんね」
芽衣は微笑んだ。「でも、それだけの価値はあった」
愛良が手を差し出すと、残りの二人も同じように手を伸ばした。三人の手が、小さく、水を含んだハイタッチで重なる。
「今日のこと、覚えておかなくちゃね」と芽衣が言った。
愛良は静かに微笑んだ。「忘れないわ」
風は涼しいが、冷たくはない。舗装路は空の光を映し、遠くで帰宅する生徒たちの声がゆっくりと消えていった。この数分間、世界は自分たちだけのものになったように感じられた。
ただ、雨上がりに笑い合う三人の少女。
ただ、まだ気づいてもいない、かけがえのない記憶を作っている三人の親友。
帰り道
もうこれ以上濡れる必要はないと判断し、三人は鞄を掴んで、歩くたびにジュッ、ジュッと音が鳴る帰り道を歩き始めた。愛良の足跡は、地面に小さな濡れた痕を残す。スカートを絞っても、あまり効果はなかった。
「お母さんに殺されるわよ」と華がからかう。
「分かってる」と愛良は言った。「でも、笑ってあげる。そしたら許してくれるわ」
芽衣が愛良の頬を突く。「あなたの笑顔にそんな魔力はないってば」
「あるわよ」
「ないわ」
「あるったら!」
三人は、別れ道の角に着くまで、ずっと言い合いを続けた。
道を分かつ直前、三人は互いに穏やかな目を向けた。
「今日はありがとう」と愛良が言う。
華は頷いた。「明日も何か楽しいことしようね」
芽衣は笑った。「次は、魚にならないものでね」
三人はまた笑い合った。
そして、それぞれ家路についた。
母親の反応
愛良が玄関の引き戸を開けた瞬間、母親の動きが止まった。
濡れた靴下が、床に水たまりを作っている。ブラウスは体に張り付き、スカートはずっと水を滴らせている。まるで服を着たままシャワーを浴びたようだ。
「愛良」
母親は目を見開いて娘を見つめた。
「一体、あなたに何があったの?」
愛良はうまく説明しようとしたが、力のない笑みを浮かべるのが精一杯だった。
「その……転がったの」
「転がったって?」
「その、地面の上を」
「濡れた地面を?」
「うん」
「制服のまま?」
「うん」
「スカートを穿いたまま?」
「うん」
母親は額に指を押し当てた。
「愛良、どうしてそんなことをしたの?」
「楽しかったの」と愛良は静かに言った。「本当に、楽しかった」
母親は深くため息をついた。呆れてはいたが、怒ってはいない。タオルを掴み、娘の肩に巻きつけると、優しく髪を拭いた。
「あなたは、きちんとしたお嬢さんでいなくちゃいけないのよ」
「分かってる」
「きちんとしたお嬢さんは、雨上がりの外で転がったりしないの」
「分かってる」
「ましてや、溺れた子猫みたいに水を滴らせて帰ってきたりしないでしょう」
「分かってる……」
愛良は更なる小言を待ったが、代わりに母親は静かに笑い出した。
「あなたは手に負えない子だわ」
愛良は見上げた。「怒ってないの?」
「怒ってるわよ。ものすごくね」
「でも……?」
「でも、あなたが楽しそうでよかったわ」
愛良は瞬きをした。
母親は、愛良の顔にかかった濡れた髪をそっと払いのけた。
「若くいられるのは一度きりよ」と彼女は言った。「もし、友達と濡れた舗装路を転がって、そんな風に笑えるのなら、それは最悪のことではないのかもしれないわね」
愛良の胸が温かくなった。彼女は、まだ水を滴らせたまま、母親に強く抱きついた。
「ありがとう」と愛良は囁いた。
「シャワーを浴びてきなさい」と、母親は優しく押し返した。「雨と泥の匂いがするわよ」
愛良の省察
その夜遅く、温かいシャワーを浴びて乾いた服に着替えた愛良は、寝室の窓辺に座っていた。再び雨が降り始め、ガラスを静かに叩いている。
彼女は目を閉じ、あの笑い声を思い出した。
水しぶき。
自分の見た目など気にせず、濡れた舗装路を転がる感覚。
友人たちの声のこだま。
枕を抱きしめて、微笑んだ。
今日は普通の日だった。
それなのに……
なぜか、ずっと覚えていそうな日だと感じた。
特別だったからではない。
ただ、単純で、純粋で、幸せだったから。
内側から彼女を温めてくれる、ささやかな記憶。
愛良は静かに自分に囁いた。「こんな日が、もっと欲しい」
外では雨が静かに降り続く。
そして、彼女の胸の中では、温かさが消えずに残っていた。