The Secret Admirer Love Letter in the Red Mail Post Box (Part 1)

赤い郵便ポストの足元で、アイラは一通の手紙を見つける。 それは、正体不明の誰かから自分へと宛てられた、秘密のラブレターだった。 秘められた想いと淡い恋心が交差する、心温まる学園ショートストーリー。

赤い郵便ポストの中の手紙

第1章:放課後の帰り道

放課後の静かな道を、アイラはゆっくりと歩いていた。
空は淡い水色に澄み渡り、空気はひんやりと心地よい。それは、どこか心を穏やかにさせる午後のひとときだった。道沿いの木々は、風に吹かれてさらさらと優しく葉を揺らしている。制服に身を包んだアイラが歩くたび、黒いローファーが路面を叩く小さな音が響いた。

疲れはあるけれど、気分は晴れやかだった。
学校が終わり、鞄の重さよりも心のほうがずっと軽く感じられた。今日の夕食は何だろう、残っている宿題を片付けなきゃ、お昼休みにヒカリが言った冗談は面白かったな……そんな些細なことを、彼女はとりとめもなく考えていた。
時々こうして一人で帰るのが、アイラは好きだった。自分だけの思索にふけることができるからだ。

歩いていると、見慣れた場所に差し掛かった。道の傍らにひっそりと佇む、赤い郵便ポスト。丸みを帯びたその古いポストは、鮮やかな赤色をしていた。毎日たくさんの学生たちがその前を通り過ぎるが、立ち止まる者はほとんどいない。
けれど、今日は何かが違っていた。
ポストのすぐ下の地面に、数通の手紙が落ちているのにアイラは気づいた。
彼女は足を止めた。

第2章:地面に落ちた手紙

アイラは辺りを見回した。
周りには誰もいない。道はひっそりと静まり返っている。
彼女は腰を落とし、一通ずつ手紙を拾い上げた。少し埃をかぶった薄茶色の封筒。誰かがポストを開けた時にこぼれ落ちたのか、それとも風に押し出されたのだろうか。
「大変、困っちゃうよね……」
アイラはそっと独り言をつぶやいた。
少し心配になったのだ。
「もしこの手紙がなくなっちゃったら、大事な知らせが届かなくなっちゃうかもしれない」

アイラは赤いポストに歩み寄った。爪先立ちになり、慎重に一通ずつ手紙を中へ戻していく。まるで壊れやすい宝物を扱うように、ゆっくりと、丁寧に。
そして最後の一通を手にしたとき、彼女の手が止まった。
アイラは目を見開いた。
そこには、ある名前が書かれていた。
「高橋アイラ」
心臓が跳ねた。
「これ……私の名前……?」
彼女は小さく囁いた。

第3章:そこにあるはずのない名前

アイラは封筒をじっと見つめた。
裏返してみる。
そこには自分の住所が、はっきりとした、けれど柔らかい筆致で記されていた。書き手が時間をかけて丁寧に書いたことが伝わってくるような、綺麗な字だった。
指先がわずかに震え始める。
「どうして……私の名前がここに?」
手紙を待っていた覚えはない。いつも郵便を受け取るのは両親で、自分宛てに届くことなんて滅多にない。それに、この手紙は学校や役所から届くような事務的なものではなかった。
それは、どこか「個人的な」体温を感じさせるものだった。

アイラは手紙を拾い上げ、胸にぎゅっと抱きしめた。
もう一度、辺りを見回す。
やはり、誰もいない。
彼女は吸い寄せられるように、赤いポストの脇に腰を下ろした。アスファルトの冷たさが足に伝わってきたが、今の彼女にはそんなことはどうでもよかった。鼓動が速くなっていく。
深呼吸をひとつ。
そして、彼女はその手紙を開封した。

第4章:匿名の送り主

中には、一枚の折り畳まれた便箋が入っていた。
手書きの文字。
アイラは丁寧に紙を広げ、読み始めた。

「アイラへ。
同じ学校に通ってから長い時間が経つね。君は僕のことなんて気付いていないかもしれないけれど。
僕は毎日、君のことを見ているよ。君の笑顔も、優しさも、友達と楽しそうに話している姿も。
僕はとても臆病なんだ。いつも君に話しかけたいと思っているのに、言葉が胸の奥で詰まってしまう。
僕たちは同じ場所にいて、同じ廊下ですれ違っている。すぐ近くにいるはずなのに、僕にとってはすごく遠い存在に感じてしまうんだ。
自分の気持ちを伝えたいけれど、怖くてたまらない。
だから、こうして手紙を書くことにした。
君が笑っていると、僕も幸せな気持ちになる。
君が悲しんでいる時は、君を守ってあげたいと思う。
何かを求めているわけじゃない。ただ、君のことをそっと想っている人間がいることだけ、知っていてほしい。
君の『秘密のファン』より」

アイラは読むのを止めた。
顔が火照り、赤くなっていくのがわかった。
心の中が、温かさと戸惑いでいっぱいになった。

第5章:問いかける心

アイラはもう一度、手紙を読み返した。
さらにもう一度。
一文字一文字が優しく、どの行からも真っ直ぐな想いが伝わってくる。
彼女はそっと紙に触れた。まるでそこに込められた感情に、直接触れられるような気がして。
「誰が書いたんだろう……」
クラスの男子の顔を思い浮かべてみる。同じクラスの誰か、あるいは他のクラスの男子、友達、物静かな生徒、それとも賑やかなあの人……。
けれど、誰の顔もその筆跡には結びつかなかった。
アイラは無意識のうちに、口元に笑みを浮かべていた。
激しく鼓動する心臓。けれどそれは、恐怖ではなく、言いようのない高揚感だった。
彼女は手紙を愛おしそうに抱きしめた。
その時――。

第6章:現れた郵便局員

「コホン!」
アイラは飛び上がった。
顔を上げると、一人の郵便局員が目の前に立っていた。
濃紺の制服を身にまとい、肩には大きな茶色の鞄をかけている。その表情は真剣そのものだった。
「君、自分宛てじゃない手紙を勝手に読んでるのかい?」
力強い声で問われ、アイラの顔はポストと同じくらい真っ赤になった。
「あ、あの! ごめんなさい!」
彼女は慌てて立ち上がった。
「この手紙、地面に落ちていたんです。だから、戻そうと思って……」
郵便局員は足元に目をやり、残りの手紙が散らばっているのを見た。
彼は小さくため息をついた。
「外で勝手に手紙を開けちゃいけないよ」
アイラは深く頭を下げた。
「本当にごめんなさい……」
彼女は手元の手紙を急いで制服のポケットに隠し、残りの手紙を郵便局員に手渡した。
「決して、悪気があったわけじゃなくて」
局員は頷いた。
「次からは気をつけるんだよ」
そう言い残すと、彼は背を向けて歩き去っていった。

第7章:駆け出す想い

郵便局員の姿が見えなくなると、アイラは大きく息を吐き出した。
心臓がバクバクといっている。
恥ずかしさでいっぱいだったが、それ以上に、幸せな気持ちが溢れていた。
とても、とても幸せだった。
制服のポケットの中にある手紙に、そっと触れる。
「よかった、無事で……」
彼女はもう一度ポストにお辞儀をすると、家に向かって走り出した。

ローファーが軽快に地面を叩く。
頬は熱く、けれど心は羽が生えたように軽い。
どうしてなのか自分でもわからないまま、彼女は走りながらずっと微笑んでいた。

第8章:静かな家、溢れる想い

家に辿り着くと、アイラはそっとドアを閉めた。
「ただいま……」
返事はない。両親はまだ仕事で不在だった。
彼女は自分の部屋へ直行し、ベッドの上に腰を下ろした。
もう一度、手紙を取り出す。
ゆっくりと、噛み締めるように読む。
今度は一言一句を逃さないよう、細心の注意を払って。
書いた人の心の鼓動を、感じ取ろうとするかのように。
「私のことを、好きでいてくれる人がいるんだ……」
彼女は独り言をこぼすと、枕をぎゅっと抱きしめた。
その時、スマホが震えた。
画面を開くと、親友のヒカリからのメッセージが届いていた。

第9章:ヒカリへの報告

アイラは震える手で、手紙の写真を撮った。
興奮で手がうまく動かない。
写真を送信し、文字を打ち込んだ。
『ねえ、ヒカリ……この字、誰のかわかる?』
数秒後。
ヒカリからの返信が届いた。

ヒカリ:
「えっ!? ちょっと待って!! 😳😳😳」
ヒカリ:
「これ本物!? ラブレターじゃん!!」

アイラは思わず笑みをこぼした。

アイラ:
『ポストのそばで見つけたの……』
ヒカリ:
「秘密のファン!? ドラマみたい! すごいよアイラ!」

アイラは声を押し殺して笑った。
胸の奥がじんわりと温かくなる。

第10章:作戦会議のはじまり

ヒカリ:
「で? アイラはどう思ってるの?」
アイラ:
『わかんない……恥ずかしくて……でも、すごく嬉しい』
ヒカリ:
「やっぱり! やっとアイラの良さに気づく奴が現れたんだね!」
アイラ:
『もう、からかわないでよ!』
ヒカリ:
「からかってないって! これは大事件だよ!」

すると、ヒカリから続けてメッセージが入った。

ヒカリ:
「よし、明日は『捜査』開始だね」
アイラは目を丸くした。
アイラ:
『捜査……?』
ヒカリ:
「そう! クラスの男子全員のノートをチェックするの!」
ヒカリ:
「この手紙の字と一致するやつが、アイラの『秘密のファン』だよ」
アイラは口元を押さえた。
瞳がキラキラと輝き出す。
アイラ:
『本当に、わかるかな?』
ヒカリ:
「任せなさい! 私たちのミッションだよ!」

第11章:微笑みの夜

その夜、アイラはベッドに横たわっていた。
手紙を胸に抱き寄せ、明日からの学校に思いを馳せる。
あの手紙を、勇気を出して書いてくれた、臆病で優しい誰かのこと。
自分は、その人に微笑みかけたことがあっただろうか。
その人の近くで笑ったことがあっただろうか。
それとも、相手の気持ちに気づかないまま、何度も廊下ですれ違っていたのだろうか。

心が満たされていくのを感じた。
暗闇の中で、アイラは幸せそうに微笑んだ。

あなたへの問いかけ

どこかで誰かが、勇気を振り絞って手紙を書きました。
どこかで誰かの心が、静かに返事を待っています。
さて、あなたに質問です。

あなたはこれまでに、好きな人や秘密のファン、あるいはクラスメートからラブレターをもらったことはありますか?
誰かが自分に好意を持ってくれていると知ったとき、どんな気持ちになりましたか?
恥ずかしかった? 嬉しかった? それとも驚いた?
もしかしたら、その全部が一度に押し寄せたかもしれませんね。😊